「0.1秒でも早く「働かない人生」を実現したいあなたへ。」
FIRE 最強の早期リタイア術 そで部分より
今さらですが、「FIRE 最強の早期リタイア術」を読みました。
「0.1秒でも早く「働かない人生」を実現したいあなたへ。」は、なかなか夢のある、魅力的な響きですよね。
一方でその内容は、そんな夢見がちな読者を恐怖のドン底に叩き落とすレベルの現実的な内容となっています。
著者の一人であるクリスティー・シェンさんも冒頭でこう言っています。
「私は聞き心地のいいことを言うつもりはありません。ただ、真実を伝えるだけです。」
FIRE 最強の早期リタイア術 序章より
今回は、そんな「FIRE 最強の早期リタイア術」はどんな内容の本なのか、それについての管理人個人的意見です。
「FIRE 最強の早期リタイア術」はどんな本?
著者のクリスティーさんは中国の四川省の農村部の出身の方です。
幼少期に医療廃棄物の山で遊んでいた彼女が、31歳でミリオネアとなって FIRE するまでの間、どのように FIRE を成し遂げていったのか、成し遂げていくべきなのかが語られています。
(関係ないですが廃棄物の山と聞いて ONE PIECE のグレイ・ターミナルを想像しました)
ざっくりとまとめるとこのような内容です。
以下、管理人が気になった点、面白かった点についていくつかピックアップします(中身全部解説、ではないのでご注意ください)。
最初は効率よく稼げる職業に就くべき
効率よく稼げる職業に就くべき、とか言われると「いやそんなお金じゃなくて、もっと大事なことがあるでしょ?やりたいことをやるべきでは?」と考えられる方もいらっしゃると思いますが、著者は一蹴します。
「統計的に見ると、情熱に従った先には、失業や不完全就業が待っているのです。」
FIRE 最強の早期リタイア術 より
本書によると、ハーバード大学とバージニア大学による研究で、1万9千人の参加者のうち、ほぼ全員が過去10年の間に自分の情熱を注ぐものが大きく変わったとのこと。
また、どんなに好きなことであっても、それをしなければならない状況では、それを楽しいと思えなくなるとも述べられています。
「次の給与の心配をしなければならないときに、仕事が楽しいということはめったにありません。逃げ道がないため、スケジュール通りに想像力を絞り出さなければならないときなどもっと悲惨です。幸運にも好きな分野で働けるときでさえそうなのです!」
FIRE 最強の早期リタイア術 より
「まぁ、そりゃそうなんだけど・・・」と身につまされる方もいらっしゃるかもしれません。
著者は、POT スコアという計算方法を用いて、どの職業が稼ぐのに効率が良いか、ということを教えてくれます。
「心から好きなことをすれば、お金は後からついてくると期待するのは危険です。まずお金を追いかけましょう。好きなことはその後でもできるのです。」
FIRE 最強の早期リタイア術 より
どうでしょう?
いろいろ異論・反論あるとは思いますが、統計データを見せられると考えさせられるところもあるのではないでしょうか。
幸福とは相対的なものである
ヘドニック・トレッドミル現象(人は幸せに慣れる生き物である性質を持っていること)について説明されています。
著者自身も、自身が2回目にハンドバッグを買った時、初めての時と同じ幸福を得られなかったと語っています。
ドイツの脳科学者の実験によると、勝率の高いゲームと低い単純なゲームを用意し、どちらも勝利すると1ユーロを得られるという実験において、勝率の低いゲームに勝つと脳が活性化し、勝率の高いゲームに負けると逆に脳の活動が低下したそうです。
つまり自分の満足感は、その期待値に対して相対的に得られるものである、ということです。
モノを購入しても満足感を得られるときと得られないときがあるということは、逆に考えると、節約においても同じことが言えると著者は述べています。
「支出を切り詰めるのは、ダイエットのようなものだと誰もが考えがちです。
・・・(中略)・・・
どころが実際は、ある種の節約はあなたの幸福感を低下させません。つまり、すべての節約に痛みが伴うわけではないのです。」
FIRE 最強の早期リタイア術 より
貯蓄を増やすには「支出 < 収入」を満たせばいいという、超基本でありながらなかなか難しい現実について、改めてその重要性を説くとともに、その具体的な方法を脳の特性を踏まえた上で解説しています。
この辺りは、家計・支出管理でもよく言われる話ですね。
家(自宅)は最悪の投資
登記や弁護士の費用、火災保険や固定資産税、住宅ローンの金利返済分を考慮するととても割に合わない、というのが著者の主張です。
著者は、毎月の住宅ローンの返済額を1.5倍(150%)して、それが家賃を下回るようであれば、1つの購入の対象になりえると述べています。
本著の舞台はアメリカ・カナダなので、日本とは状況が違う面もあるかとは思いますが、1.5倍というのはなかなか厳しくて、日本でもこれを満たすのは難しいかもしれません。
管理人としても著者と同意見で、多くの人にとっては自宅は購入しないほうがイイと思います。
ただし管理人個人は自宅を購入しています。これについては後述します。
お金を浮かすために旅行する
著者によると、FIRE 後に1年間世界旅行をしたところ、カナダで仕事をして生活していた時よりも生活費が下がったということです。
コレ結構驚きじゃないですか?
もちろん、高級ホテル・高級レストランばかり行っていれば別ですが、いくら何でも一年中ずっと高級ホテルや高級レストランばかりでは飽きます。
つまり、特に節約を目的とするわけではなく、体験を得るために、Airbnb などによる民泊も活用しますし、自炊もします。東南アジアなどの生活費の安い国にも訪れます。
そうすると、特に節約を意識しなくても旅行全体の費用が下がるとのこと。
確かに言われればそうだと思うんですけど、個人的には新鮮な考えで勉強になりました。
「株式市場が暴落するたびに、自分たちに繰り返し言い聞かせる格言があります。困ったときにはタイに行こう。」
FIRE 最強の早期リタイア術 より
著者はタイがオススメなようです。
子どもがいても金銭的にはそれほど心配ない
世間で言われているほど子育てにはお金はかからないよー・・・という話なのですが、これはアメリカでのデータですので、本著での数字を日本でそのまま当てはめるのは難しそうです。
ただ、世間でよく言われていて、なんとなく「そういうものでしょ?」と思っている数字は、ちょっと疑ってかかったほうが良いというのは個人的には同感です。
また、ワールドスクーリングというものを初めて知りました。
子どもと一緒に旅しながら生活する・・・
純粋にうらやましいなと思いますし、一つの理想的な形だとも思いますが、実際に実行に移せるかは・・・難しいところです。
自宅に対する考え方
著者のクリスティーさんは、マイホームの購入は反対とのことですが、「買う前にしっかりと計算することが大切」とも述べています。
全くその通りで、計算した上で投資対象にもなり得ると判断できるのであれば購入すべき、というのが管理人の基本的な考え方です。
著者は、住宅所有にはさまざまな費用が掛かり、通常は投資対象になりえないと述べています。
確かにその通りですが、ただしこれはアメリカでの話であり、日本とは少し事情が異なります。
日本と同じく、アメリカの住宅ローンも歴史的な低金利を迎えていますが、それでも3%程度はあります。
対して日本では変動金利で0.5%とかは普通にあります。
仮に 3,000 万円を期間35年、元利均等返済のローンで組んだとすると、利息の総支払額は0.5%の場合はおよそ270万円なのに対し、3%の場合は約1、850万円と約7倍となります。
さらに日本の場合は住宅ローン減税(50㎡以上といった条件はアリ)がありますので、年末のローン残高の1%が所得税還付という形で戻ってきます。
上記 3,000 万円の例で言えば、10年で約256万円の還付が受けられます。
つまり、利息は35年で実質16万円しかかかりません。一か月あたり約380円となり、ほとんど問題となりません。
この256万円を繰り上げ返済するなどすれば、さらに利息は減るでしょう。
また、持ち家の場合定期的にかかる費用である固定資産税、マンションであれば管理費や修繕積立費ですが、賃貸ではこれらを支払う必要がないかというと、そんなことはありません。
通常、賃貸であってもこれらの費用は家賃に含められているからです。
保険も同様です。賃貸であっても、借主は通常火災保険に入る必要があります。賃貸だから保険に入らなくていいというわけではありません。
よって、持ち家ならではの費用というのは不動産取得税と登記費用(合わせて20~30万円程度)くらいです。
ここまでくると「じゃあ持ち家の方がいいじゃん」となりそうですが、「日本では不動産の価値は下がる」という最大の問題があります。
逆に考えると、価値の下がらない不動産、いわゆるリセールバリューの高い不動産を購入することができる人は、賃貸ではなく持ち家にするべき、というのが管理人の考えです。
「バビロン 大富豪の教え」でも「より良きところに住め」と言っていますしね。
ただし、今の日本でリセールバリューの高い不動産を購入するのはかなりの調査や努力、運(重要)が必要になりますので、基本的には賃貸をオススメします。
まとめ
読んだ最初の感想としては、「あ、これ三菱サラリーマンさんだ」でした。
三菱サラリーマンさんは、新卒から収入の8割を投資に回し続け、30歳で経済的自由を達成したスゴい人です。
本著では、投資で一発あてるとかそういった夢物語のたぐいの内容ではなく、努力を継続できさえすれば、だれでも実現できる、再現性の高い方法が語られています。
ただ、この「努力」は、誰にでもできる・・・とまでは思えませんでした。
「著者だからできたんでしょ。自分にはムリムリ。」と捉えるか、「今日から早速行動に移そう!」と思えるかは、個人差がありそうです。
そのあたりは実際に手に取って確認してみていただければと思います。
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