「妻を社長にして会社を作る」シリーズ3回目です。
今回は、「融資が下りない」です。
前回分はこちら。
いやー・・・勉強不足でした。
今回設立しようとしている合同会社は、不動産の管理を主とする、いわゆる「資産管理会社」です。
当然ですが、管理する不動産物件を取得していく必要があり、そのためには物件を取得するためには金融機関からの融資が(ほぼ)必須となります。
しかし、「妻が社長」だと金融機関が融資してくれないのです。
なぜ融資が下りないのか?
先日、融資の相談のために某地銀に行ったのですが、代表社員(株式会社でいうところの社長、代表取締役)は本人でお願いしたいということでした。
本人というと定義が難しいのですが(だって、妻自身がやる気があって法人を立てたい、というケースだってあり得ますからね)、不動産会社の仲介さんと実際にやり取りしている人が「本人」とみなされるということだと思います。
そこを何とかということで多少食い下がっては見たものの、受け入れてはいただけず。
理由についても伺ったのですが、かわされて教えてもらえませんでした。
どうも、社内的なルールとして決まっているような印象です。
というわけで、「なぜ妻が社長だと融資が下りないのか?」については想像の範囲を出ないのですが・・・いろいろ調べると一般的には次のような原因があるようです。
- 妻が実際の業務に関与する確証がない
- 民法改正で保証人をたてるのがめんどうになった
(金融機関によって対応の差はあると思いますので、ご注意ください)
妻が実際の業務に関与する確証がない
妻を社長にする理由としてはいろいろあると思いますが、よくあると思われるのが、「会社バレしたくない」だと思います。
今回の自分もこのケースです。
で、このケースの場合、「妻は社長だけど実際の業務については何も知らない」ということも多いと思います。
しかし、実際に社長は妻なわけですから、何かあれば金融機関は妻に対応を求めます。
当然ながら妻は実際の業務に関与していないわけですから、応えられません。
まぁ・・・、いろいろトラブルが発生することが容易に想像できます。金融機関は、こういった事態を避けたいのだと思われます。
「妻や子供を社長にして融資申請をすることは可能か?」によりますと、以下のように説明されています。
この可否には大前提があります。それは「奥様が事業に実際に参画するかどうか」と言う点です。こういう質問をすると「いえ、それはありません。専業主婦ですし、事業には全く興味がありません」と言う回答が帰ってくる場合もあります。
しかしながら、そういう状況の奥様が社長になって、創業融資の面談・相談を通過できるのでしょうか?
また、「自分が財務担当者として同行し、私が面談に立ち会おうと思います。それならどんな質問をされても回答できると思います」と言う方もいるのですが、申請するのは代表者ですから、金融機関の担当者は奥様に質問をします。もうその時点で無理かもしれません。
妻や子供を社長にして融資申請をすることは可能か? - 中山隆太郎税理士事務所
なるほど、なるほど。
今回のケースの場合、銀行に出向いたのが自分である時点で、「妻が社長」ケースはありえなかったということだと思います。
ちなみにウチは妻も小規模ながら不動産投資やってますので、対応はできると思いますけどね・・・
民法改正で保証人をたてるのがめんどうになった
2020年4月の民法改正で、個人が連帯保証人になるためには、公証役場で保証人の意思を証明する証書を作ってもらうことが必要となりました。
要するに、たとえ契約書に連帯保証人としてサインして、ハンコを押していたとしても、それだけでは連帯保証人にはなれませんよ、ということです。
これは「なにがなんだかよくわからない」状態の人が、わからないままに契約書にサインしてしまい、高額な連帯保証人になってしまうような事態を避けるために設けられたようです。
でも証書をつくるだけでイイんでしょ?ということですが、コレ実際には
- (保証人になろうとしている)本人が公証役場に行って、
- 「保証人になるよ!」という手続きをして、
- 公証人に「保証人になるよ!」という意思を示して、
- 実際に公証人が「この人本当に保証人になろうとしているな」という確認ができて初めて、
証書(「証意思宣明公正証書」というらしい)が作成される
という超めんどい(やったことないけど)手続きを踏む必要があります。
金融機関としてもこれはやりたくないらしく、アパートローンなどの融資では連帯保証人は不要、というケースも増えているそうです(その分、融資の審査が厳しくなるけど)。
じゃあこれが「妻が社長」とどう関連してくるのかというと・・・
あくまで一般的な話、一般的なケースとしてですが、夫よりも妻の方が属性(いわゆる与信枠)が低いことが多いです。
そのためこれまでは、妻が社長の時は(より与信が高い)夫が保証人に入るということが多かったようです。
金融機関としては、これでまぁ安心というわけですね。
しかし上記の事情により、そもそも保証人を設定するのが難しくなりました。
そうすると、やはり(もともと与信のある)夫、つまり妻ではなく本人に社長になってほしいというのが、金融機関の考えのようです。
(以下参考にさせていただきました。感謝)
法人を設立する前に注意すべきこと
誰を社長にするのか明確にしよう
というわけで、今回のケースにおいて「妻を社長」にするのは難しそうだというのがわかりました。
(次回からはシリーズのタイトル変えないと・・・)
さて1点、今回の件に関して注意を要するポイントがあります。
それは法人の定款です。
詳しくは次回以降で書いていきたいと思いますが、法人設立時には、その会社の目的やルールなどを定めた「定款」というものをつくる必要があります。
この定款には「誰がこの会社の社長なのか」を書く必要があります。
そう、本人が社長なのか、妻が社長なのか、をここにキチンと書く必要があるのです!
いったん妻を社長にして定款を作ってしまうと、後で融資を受けられないとわかったときに、定款を作り直す必要があります。
えぇ。もちろん、お金かかりますよ。登録免許税3万円。あともろもろ手続きも必要です。
資産管理会社に限った話ではないですが、法人設立後にその法人で融資を受ける予定があるのであれば、まずは金融機関に確認をとっておくのが無難かもしれません。
(ちなみに自分は今回、前もって金融機関に確認してから法人設立を行っています)
法人の本店所在地は慎重に決めよう
もう1点注意すべき点があります。それは会社の住所です。
前々回のポストで、今回妻を社長にする理由は「会社バレしたくない」と書きました。
上記のポストでは「会社の就業規則規則違反したくない」という内容で説明していますが、「会社バレ」という観点ではもっと重要な点があります。
それは、「会社をつくると誰でもその情報を検索でき、会社の住所や社長・役員などの情報を調べることができる」という点です。
たとえばあなたが会社をつくったとして・・・
- 何かのキッカケで、あなたの本業の会社が「こいつ副業してるんじゃね?」と疑う
- 会社があなたの住所で法人情報を検索してみる
- コイツの住所になんか法人があるぞ?社長誰だ?
- 社長を確認してみたところ、あなたの妻が社長だった
という流れですね。
この最後の部分が重要で、「妻が社長だった」であれば、「いやそれ妻がやってる会社ですから」と言えば、あなたの本業の会社としては、これ以上は追求しようがないわけです。
さらに言えば、「2.会社があなたの住所で法人情報を検索してみる」で、そもそもあなたの住所に法人が存在しなければ、それ以降に進むことはありません。
会社を自分の住所以外に設定する方法としては、例えば実家を設定するであるとか、ナレッジソサエティのようなバーチャルオフィスを利用する方法があります。
しかし、一般的にバーチャルオフィスは金融機関に嫌われます。
実家を設定するにしても、ある程度あなたの住所に近いところでないと厳しいようです(ちなみに自分の実家は地方なのですが、今回融資相談をさせていただいている地銀さんには断られました)。
また当然ながら、郵便物などは実家に届くようになってしまうので、そのあたりの対応も必要です。
つまり、資産管理会社を立ち上げて金融機関から融資を受けるつもりであれば、本店所在地は自宅にしておく方が無難であるということです。
これから法人を立ち上げる人はご注意ください。
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